Fujifilm X Labo

Fujifilm Xシリーズの研究を気まぐれに行う。

富士フイルムで桜を美しく撮る── ディテールの強化追追試

Tokyo Tama Cycling Road


X-T3, XF23mmF1.4 R, 1/100 sec, f /8.0, ISO160

日本各地で桜が満開を迎え、ここ数日で桜の写真を撮っている人は数千万人にのぼるだろう。さて、昨年までは、富士フイルム(Xマウント)ユーザーはポップコーン現象などに悩まされ、桜を綺麗に撮るのは容易ではなかった。しかし今年からは、富士フイルムユーザーも簡単気楽お手軽に桜を美しく撮ることが出来るようになった。その方法とは、そう、RAWで撮ってLightroomのメニューからディテールの強化ボタンをポチっと押すだけだ。しつこいようだが、今回もX-T3撮って出しJPEGLightroomでディテールの強化処理済みの写真を比較していくことにする。(興味がある方は上記リンク先からフルサイズの写真をダウンロードし、ディテールを評価できる。)

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桜の花のディテール比較

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ハイライト側の階調性、木肌や小枝の描写の比較

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最も離れた場所の描写の比較

*1 比較用撮って出しJPEGの設定:FS = Classic Chrome, +2/3EV, ノイズリダクション-2, その他デフォルト

*2 比較用Lightroom JPEGの設定:FS = Classic Chrome v2, +2/3EV, ディテールの強化, その他デフォルト

 
・・・ここまで差が明らかだともはや説明は不要かもしれない。撮って出しの画像は階調性が悪く、花びらが癒着し合いドロッとした花ではない何かがまとわりついているように感じられる。一方でディテールの強化処理済みの画像は階調性が良く、花びらが花びらとして描写されているように感じられる。

ディテールの強化の影響は桜の花に限らず、木肌や小枝の質感、桜の薄いピンク色、雄しべ雌しべやがく筒の赤の再現など様々な場所に効いており、撮って出しに比べて非常に高い階調性と質感が高くなる。

こと桜のような被写体に関しては、3000x2000以下に縮小しても明らかな差が出てしまう。つまりA4サイズ程度のプリントでも影響を受けることになる。すると「等倍鑑賞しなければ差は出ないから問題ない」という言い訳も難しい。
 
結論
老舗フィルムメーカーである富士フイルムは『フジカラー』『色へのこだわり』『RAW現像不要』などなどと色を売りにしたマーケティングを行なっている。しかし現実はその逆、悲しいことに低品質なデモザイキングにより撮って出しJPEGからは色や階調性が失われ、ユーザーはRAW現像を強いられている。富士フイルムのレンズの光学性能やボディの操作性や質感は十分に素晴らしいので、撮って出しJPEGの品質の改善は急務だろう。

Lightroom ディテールの強化追試 w/ XF23mmF1.4 R

Osaka Station XF23mmF1.4 R Enhanced Details

X-T3 + XF23mmF1.4 R, 1/125 sec, f/6.4, ISO160

 今回はX-Transに対するLightroomディテールの強化の効果について追試を行ってみる。Adobeのディティールの強化では、解像の他に色や階調性も改善されているということで、マイクロコントラストの表現と解像力に優れたXF23mmF1.4 Rでグラデーションのある景観を撮ってみた。

blogs.adobe.com

XF23mmF1.4 Rというレンズ

XF23mmF1.4 Rは機動力に優れるX100系やXF23mmF2 R WRという強力なライバルの影に埋もれあまり注目されていないようだ。しかし、その正体は数あるXFレンズのなかでも最も美しい描写をする、陳腐な表現をすれば、「真の魔法のレンズ」だ。どちらかというとベンチマークで表し難いボケ味や階調性(いわゆるマイクロコントラスト)に優れるタイプ。その上で、歪みはイメージ全域でほぼ完璧に抑えられており、周辺や四隅でも一瞬クロップを疑うほどシャープに解像する。少し絞れば減光も目立つ収差もほとんど無くなるという優等生でもある。腕が良い人はとても見栄えのする写真を簡単に、そうでない人でも良い写真をそれなりに撮ることができる素晴らしい道具だ。

fujifilm-x.com

カメラ撮って出し vs ディテールの強化

左がカメラ撮って出しで、右がLightroomでディテールの強化を施した拡大比較画像。Film SimulationとCamera Profileは双方Classic Chromeを選択し、他のパラメータは一切いじらず初期設定のままとした。

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左下隅

XF23mmF1.4 Rの左下隅の描写は一瞬クロップを疑うほど。左右を比較すると、強化版の方が文字が明らかにきれいに解像していることが見て取れる。

 

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左端

左端も凄まじい解像。強化版の方が時計、旗、広場の「場」の字のがよく解像している。

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中央付近遠方

カメラ撮って出しは遠くの表現がいい加減でボヤボヤになってしまう。また、強化版は解像力が高いだけでなく、撮って出しでは失われてしまっている赤や青の色情報がきちんと残っている。

 

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右上付近天井

撮って出しは一見ノイズが少ないように見えるが、グラデーションが塗りつぶされている。強化版はグラデーションがより高い階調性で再現されている。

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右側遠方

強化版は木や信号のディテール部がよりきちんと解像しているだけでなく、赤信号の色情報もバッチリ残っている。撮って出しは何色なのかよくわからない。

 

結論

Adobeのディテールの強化はやはりホンモノだ。某F社のデジタル超解像処理などとはわけが違う。ディテールの強化によりここまで色再現や階調性に差が出てしまう以上、Xマウントユーザーが撮って出しを使う行為は単なる「怠慢」としか言いようがないだろう。

 

 

 

 

 

などとイキってみたものの、やはり大伸ばしプリントや等倍鑑賞しないとなかなか分からないレベルではあるし、ズームレンズに至ってはほとんど効果がなさそうだ。さらに、前述の通りCPU時間やストレージ容量を多大に食うため、これを日頃の撮影全てに適応するのは現実的とは言えない。富士フイルム様がX-Trans 5世代でデモザイキングをAdobeレベルに改善してくれることを願うばかりである。