Fujifilm X Labo

Fujifilm Xシリーズの研究を気まぐれに行う。

XF14mmF2.8 vs XF10-24mm 比較と選択

XF14mmF2.8 Rというレンズ

Spacious open space in a building

X-H1, XF14mmF2.8 R, 1/15 sec at f/6.4, ISO200

XF14mmF2.8は、とにかく235gと軽くて小さくて持ち運びやすい点がすばらしく、扱いにくい画角の割に日常での持ち歩く頻度が高い。解像力は大口径のXF16mmF1.4やXF23mmF1.4と比較するとほんのわずかに劣るものの、超広角レンズとしては優秀。周辺光量落ちは大きめなため、星景などでは若干不利になるかもしれない。操作性には少し癖があり絞りリングとフォーカスリングが異常に緩く、すぐに回ってしまうため、気をつける必要がある。付属のフードはキットレンズと共用という非常にお粗末なものだが、最近になってサードパーティからまともなスクウェア金属フードが発売されている。

 

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XF14mmF2.8 vs XF10-24mmF4簡易比較

XF10-24mmはズーム域のうち14~16mm付近で最も高い解像力を見せる。比較すると全体的にXF14mmの方が解像力は高いが、その差はわずかだ。(XF10-24mmとF値がf/11なのは、ほぼ同時に撮ったf/8よりも明らかにシャープだっため。)

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画面中央比較(左が14mm右が10-24mm)

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画面右端比較(左が14mm右が10-24mm)

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画面右下隅比較(左が14mm右が10-24mm)

"建築物"が得意なのは?

XF14mmF2.8は”建築物”に向いていると言われることが多い。理由は歪みが少なく、周辺まできっちりと解像するためためだという。確かにそれらは捨て置けない要素ではある。しかし、個人的には、そんな細かい部分より画角の方がよほど重要だと思う。建築物撮影は足ズームで寄ったり引いたり出来ない状況が多いため、どう考えても単焦点レンズよりもズームレンズに分がある。多少の歪みがあってもソフトウェア補正してしまえば本人以外の観者はほとんど気づくことすらない。建築物におすすめな広角レンズはどちらかといえば画角の柔軟性に優れたXF10-24mmF4だ

 

結局どちらをチョイスするのか

どちらを選択するかは「10-13mmを本当に使うかどうか」にかかっている。自分の撮影スタイルでは10-13mmの焦点距を使うことがほぼ無い。というか、恥ずかしながら技量不足で10mmはさっぱり使いこなせない。そして、XF10-24mmF4の望遠側のひどい画質に妥協できるのであれば、XF14mmF2.8を後処理でデジタルクロップすることで14-23mmズームとして使っても全く問題ない。ということで、XF10-24mmF4はあとから気まぐれに買ったXF14mmにF2.8に食われて出番がほとんど無くなってしまった。

XF16mmF2.8 (XF16mmF1.4との比較)

Bottles on Hanging Shelf in a Bar

X-T3, XF16mmF2.8 R WR, 1/125 sec at f/2.8, ISO160

今回はXF16mmF2.8をXF16mmF1.4と比較しながら軽くレビューしてみる。XF16mmF2.8は基本的にコンパクトでハンドリングしやすいレンズだ。サイズ重量やF値などスペック表に書いてある部分に関してはほぼ省略。

 

解像力
XF16mmF2.8の解像力は、XF16mmF1.4と比較すると、目に見えるレベルで落ちる。解像力に関するXF16mmF2.8の問題点は大きく二つある。一つ目は、純粋に周辺や四隅の解像力があまり良くないこと。これは後述する電子補正の悪影響だろうか、どんなに絞っても改善しない。二つ目は、近接での開放の描写がソフトになること。f/4〜5.6まで絞ればカッチリ写るようにはなる。しかし、そこまで絞るとボケを活かした表現はかなり困難になってしまう。

それぞれ50枚くらいずつ遠景近景撮って描写を比較、まとめたものが下記テーブル。

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XF16mmF2.8 vs XF16mmF1.4 解像力比較概要

 比較写真があまりにも膨大になるので、代表的なもののみ掲載する。

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遠景比較ポイント

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遠景、中央比較@f/5.6

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遠景、右端比較@f/5.6

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遠景、右下隅比較@f/5.6

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接写比較ポイント

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接写、中央比較@f/2.8

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接写、中央比較@f/4.0

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接写、周辺比較@f/5.6


ボケ
XF16mmF2.8でボカした写真を得る条件は限られるが、ボケ味は悪くない。XFレンズというよりもどこかX100シリーズに似ている柔らかいボケ。自分は好み。

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X-T3, XF16mmF2.8 R WR, 1/60 sec at f/2.8, ISO640

歪曲収差
XF16mmF2.8の一番大きな問題は強烈な樽型の歪曲かもしれない。ここまで激しく歪む単焦点レンズは中華レンズ含む他のメーカーを探しても殆ど見つからないと思う。撮って出しJPEGやメジャーな現像ソフトならば歪曲は自動で電子補正されるが、その補正によって画質が低下することは言うまでもない。

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XF16mmF2.8 歪み補正前と補正後

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XF16mmF1.4 歪み補正前と補正後

画角
XF16mmF2.8はXF16mmF1.4と比較して、画角が広い。電子補正前だと、XF16mmF1.4よりもXF14mmF2.8の画角にかなり近づく。レンズの名前がXF15mmF2.8でもおかしくない。

 

周辺減光
XF16mmF2.8の周辺減光はかなり大きい。電子補正で目立たなくなるが、当然ノイズは増える。

 

ハンドリング
XF16mmF2.8の絞りとフォーカスリングは硬めでねっとりとしたクリック感があり、かなり高品質でXF16mmF1.4よりもずっと良い。サイズは他のコンパクトプライムシリーズよりも更に小さく、X-T30などと組み合わせれば、機動力は非常に高い。

 

結論
軽い小さい画質もそこまで悪くはない。しかし、5万円弱のFujinon単焦点レンズとして考えると、性能には複数の疑問符がつく。少し大きくなっても開放F2.0と歪みの抑制を実現して欲しかった。開放f/2.8はボカせる条件がかなり限定されるため、背景を整理して作り込む技術がF1.4よりも高いレベルで求められる。広角初心者ではなく広角レンズに慣れた老練ユーザーにこそ相応しいレンズかもしれない。(ということで自分にはF1.4が良さそう)

XF35mmF1.4は風景が苦手?

Nagasaki Sea in Japan

X-T2, XF35mmF1.4 R, 1/680 sec at f/8.0, ISO200, Details Enhanced by ACR.

XF35mmF1.4は風景や遠景が苦手という評判を見かけることがある。一体なぜだろう?

 

理由のひとつは、レンズの問題と言うよりもX-Trans RAWのデモザイキングの難しさが関係している。これはAdobeがディテールの強化を導入したことで問題はほとんど解決されたと言っていいだろう。

 

もうひとつ考えられる理由は、富士フイルム自身が遠景が苦手であることを匂わす記事を書いているためだろう。

fujifilm-x.com

(XF35mmF1.4は)近接から中間距離を常用域とし、そのRangeに配置された立体物が、センサー性能の極限まで写るように作られている。
もちろん、そのために諦めたものもある。いわゆる画面中心から周辺まで、均質的な写りはしない。しかし、このレンズで平面的な被写体を撮ることは、おそらく殆ど無い。

このOne lens one story、なんとも乱暴な話である。35mm判換算50mmは人も風景も何でも撮れる画角だし、実際は開放側ばかりではなく絞って平面的な被写体を撮ることだって普通にあり得るだろう。

 

最後の理由は、先のMTFスコアの話と重なり、LensTip.comのMTFチャートの成績が非常に悪いからだろう。このXF35mmF1.4の成績は富士フイルムのラインナップの中で一番安い廉価キットズームXC15-45mmすらも下回るプアなものだ。

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XF35mmF1.4 MTF Chart, 引用元: LensTip.com

 

しかし、である。先の通り、これらMTFスコアはあまり意味をなしていない場合が多々ある。実際に、絞って遠景を撮ってみればすぐに分かるだろう。XF35mmF1.4 Rはいわゆる画面中心から周辺まで、均質的に極めてよく解像するレンズである。以下にクロップ画像を載せるが、Flickrからフルサイズをダウンロードして等倍鑑賞することも可能。

"数字"や"ストーリー"よりも"写り"。

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画面中央付近クロップ

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画面左下隅クロップ

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画面右端クロップ