Fujifilm X Labo

Fujifilm Xシリーズの研究を気まぐれに行う。

LensTip.comのMTFチャートで異なるレンズを比較できるか

「ズームレンズAは単焦点レンズBよりも解像力が高いレンズだ。その根拠はレンズテストサイトのMTFスコアの比較である」最近、たまにこんな感じでレンズを比較評価をしている人を見かけることがある。・・・果たして、それは本当に有効な比較なのだろうか?検証&考察してみたいと思う。

LensTip.comOpticalLimitsというサイトをご存知だろうか?*1あえてこのページを表示した人の多くはきっとご存知なのだろう。彼らは数多のメーカーのレンズについてレビューを行い、各パラメータごとに定量的なデータを出している非常に有意義で優れたウェブサイトだ。自分もよく参考にさせていただいてる。 

さて、LensTip.comによるとXF16mmF1.4とXF10-24mmF4のMTFチャートは以下の通りだ。

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XF16mmF1.4 MTFチャート 引用元:LensTip.com

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XF10-24mmF4 MTFチャート Center 引用元:LensTip.com

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XF10-24mmF4 MTFチャート Edge 引用元:LensTip.com

このデータを見る限りだと、確かにf/8まで絞った場合、数字上はミドルクラスズームレンズが大口径単焦点を上回り、画面全域でより解像するということになる。

 

そしてXF16mmF1.4に関しては

Our problem? For such a fast ‘prime’ it is not enough. We wanted to see results of at least 72-73 lpmm. For instance the Fujinon XF 23 mm f/1.4 R was able to exceed slightly a level of 70 lpmm and a bit slower Fujinon XF 14 mm f/2.8 R could reach 72 lpmm. Those several small lpmm are the reason why we call the performance of the Fujinon XF 16 mm f/1.4 R WR only good, not excellent.
A bit better results on stopping down are the only thing lacking here. It would be nice if the lens exceeded 55 lpmm or at least brushed against it; after all the 1.4/23 model managed that much.
To sum up the Fujinon XF 16 mm f/1.4 R WR fared very well in the frame centre and on its edge. It is not an outstanding device, if it was it would have results by 3-4 lpmm higher

このように記述されており、「MTFスコア(空間周波数)が低めで単焦点の割にはそれほどシャープではない」レンズとして評価されているようだ。

ところが、実際の撮影ではこのような結果にはならないXF16mmF1.4は他メーカーも合わせた同一画角のレンズの中でもトップクラスの解像力を持っており、富士フイルムの広角ラインナップの中ではおそらく1番か2番に位置するだろう。ズームレンズとの差は比較にならないレベルなのだ。百聞は一見にしかず、以下にそれぞれのレンズ@f/8で撮影した比較を示す。クリックで拡大可能。*2

 

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画面中央(左がXF10-24mmF4、右がXF16mmF1.4)

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画面左下(左がXF10-24mmF4、右がXF16mmF1.4)

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画面右端(左がXF10-24mmF4、右がXF16mmF1.4)


あいにく撮影日が違うため、厳密な比較は出来ないが、それを差し置いてもXF16mmF1.4はXF10-24mmに対してベールを一枚脱いだかのごとく良く解像するのがわかると思う。*3


このような、テストサイトのMTFスコアと実際に写真を撮った場合の解像力との乖離は、他のレンズに置いても多々見られる。なぜこのような事が起こるのかはよく分からないが、怪しい点はいくつかある。

1.レンズには個体差があり、その個体差が数字に大きく反映される可能性がある。これを考慮するには複数個体をテストする必要がある

2.テストにはチャート&三脚設置やマニュアルフォーカスなど人力でやっているの工程が含まれている。ここでのピント合わせのほんの僅かな違いが数字に大きく反映される可能性がある。

3. 富士フイルムのレンズに関してはX-TransのRAWをデモザイキングしなくてはならないが、昔のdcrawでまともなデモザイキングを行えていたか疑問。

4. 自動化されたテストがブラックボックスであり、きちんと機能しているのか不明。

5. etc

レンズテストの素人が何を言うというご指摘はごもっともだが、実際の撮影結果との乖離が激しすぎて、MTFスコアの信頼性と再現性が疑わしいことだけは否定しようがない。ちなみに、その他のパラメータ、周辺減光や、歪曲収差、CAなどに関しては上記の影響を受けにくく、信頼できるデータだと思われる。

 

強引に結論
・LensTip.comやOpticallimitsなどのテストサイトは非常に有意義な情報を出しているが、ことMTFスコアに関しては疑って見るべき
・異なるレンズ同士のMTFスコアの大小を比較して、あっちがシャープだこっちがシャープだという安易な結論に至るべきではない。

MTFチャートは同一レンズの解像の傾向を見る参考情報程度に留めておくべき。
・特に異なるマウントのレンズ同士の比較は、センサーからして違うため、MTFスコアの大小の比較はまったく意味を成さない。
・解像力に関しては実際に写真を撮って比較・判断するのが一番。それをどこかでレポートしてくれたら最高

*1:他にもレビューサイトはたくさんある。

*2:ボディはX-T2、ガラス越しで撮影、Lightroomでディテールの強化を適応、プロファイルAdobe Colorその他何もいじらず

*3:XF10-24mmF4がダメという話ではまったくない。軽くてそこそこよく写る優れたズームだ。